Note
偶然
- 2025-05-08
確か、約10年前くらいだったと思います。
原宿と渋谷の中間くらいに位置する角地のコーヒー屋で、
友人の彼が「エルメスのアレ買ったんですよ」と話していたのは。
自分も アレ に関しては知識として、
その昔にデザイナーM.が
フランスの漁師が着用するスモックから着想を得て
極限までミニマルに仕上げた
ブラウスであると知っていましたが、
リアルタイム世代ではないので
コーヒーの香りに包まれるその場で実物を見ました。
それはそれはまぁ深い切れ込みで、
溜め息が出るほど(ホントに) 綺麗な生地と縫製。
一般人が考えるシンプルとは どこか別次元 だと、
ぼんやりとした感想を抱いたことを覚えています。
今は活動拠点を海外に置いている彼、
まだ持っているのだろうか。
元々知見ある先人方は当然にご存知であったりして、
狭い範囲で楽しまれているブラウスという認識でしたが、
時代の変化で情報共有のスピード感も変わった影響か、
間も無くして何処かから一気に情報が共有されることに。
その切れ込みとカタカナ5文字が
どこか一人歩きしている程に知名度を得ていくのを
角地のコーヒー屋の後から肌で私は感じていました。
私のようにソレをプライベートで
ちゃんと着て愛でたことが無い人間でも、
まるで知ったような素振りが出来るほどに。
エルメスのウィメンズラインに限った展開なので、
物理的に難しい事はご容赦願いたいところですが…
(大きめサイズもあるじゃん、とか言わないでくださいね。)
その10年後の今、私が目の前にしているのは
デザイナーM.が線を描いた切れ込みではなく、
後任である Jean-Paul Gaultier氏 が描いた一着。
漁師が着用するスモック自体をカタカナ5文字で
ヴァルーズ とフランス語で呼ばれるのですが、
自身のブランドでもマリンルックを愛している事が明らかな
ゴルチエさんらしい原型ズバのヴァルーズ。で、
エルメスのクオリティで仕立てたブラウス。あったんですね。
デザイナーM.とゴルチエさんの有名な関係性は
この場では割愛いたしますが、
こちらの一着からも偶然的な共通項目が多く、
外野の我々を熱くさせてくれます。
綺麗だの、美しいだの、
それらしい言葉は容易に並べられますが、
もはや書き起こすまでも無いくらい
実物のビジュアルで完結させてくれる中、
想像を掻き立てられるその背景も楽しめるのは、
我々外野ならではの視点/特権でしょうか。
どう解釈するかは、
手にされる方の節度で自由だと私は思います。
HERMÈS by Jean-Paul Gaultier
French Fishermen’s “Real VAREUSE” Style Smock
言葉が一人歩きせず、共に歩める内に。
阿部
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